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UPDATE:2017.7.25

業界著名人がアニメ作品をオススメ!

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最新作は岩井俊二監督のドラマが原作の劇場アニメーション
――制作作業は佳境だと思いますが、実際どんな感じですか?
新房
佳境なのは自分よりは、現場で絵を描く方たちです。公開は8月18日なので、ギリギリまで粘って差し替えたりすることになると思います。音にしても、本番の絵でもう一回再調整する時間がいただけているので、完成度を高められると思います。
――できてる部分をご覧になって、いかがでしょうか。
新房
実は不思議なんですけれど、「優先カット」みたいに名前をつけて、「早くどうなったのか見たい」と思うカットほど、最後まで見られないんですよね(笑)。先に上がってきた試しがない。不思議ですねこれは。どこかしらで止まって、言葉が効力を失うみたいです。
――そもそも東宝の川村元気プロデューサーからのオファーは、いつぐらいでしたか。
新房
たぶん……2012年です。
――そんなに前なんですか(笑)。
新房
けっこう前になります。去年公開予定で進めた時期もありましたが、いろいろあって今年公開になっています。
――世間では『君の名は。』が当たった文脈もあってこの企画と考えていると思います。自分はアニメ映画がそんなに早くできるわけがないので、もっと前から仕込んでいたとは思いましたが、5年前とは意外でした。
新房
ホントは去年できてなければいけないような作品ですよね。なのに、なぜいま完成していないのか。すごく謎です(笑)。
――2012年にお話が来た時、『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』という作品については、ご存知でしたか。
新房
知ってはいましたし、たぶん当時も観たと思います。ただ放送ではなく友だちのビデオで「これは見ておこう」みたいに、みんなで見たような記憶があります。それでこの仕事が来た時点で、もう一回ちゃんとDVDで見ました。
――見返してみて、どうでしたか。
新房
「ああ、いい雰囲気だなあ」と思いました。ただ、ひとりの女性をフィーチャーしている点で、「これはやはり実写向きの作品だよな」という感想でして……。
――たしかにヒロインの存在感が全体を支えてる感じがしますね。
新房
そう思いますよね。だから、はたしてこれが絵に置き換えられるものなのだろうかという。奥菜恵という女優の、あの時期だからこそ成立していた淡い感じ。そういう部分をうまく切り取っている実写だからこそ、いいんだろうなと。それをアニメにするって、どうすればいいのか、まだそのときは自分もよくわかっていませんでした。原作者の岩井俊二さんご自身が映像作家ですし、原作に寄せてほしいのか、あるいは特別な設定を使うことで、もっとアニメ風にしたいのか、何も手がかりがなくて。
――ということは、ドラマを出発点としつつ、岩井さんたちとの打ち合わせで方向性を探る感じだったんですか。
新房
いや、それがそうでもなかったんです。大根仁さんが脚本に入るということは、すでに決まっていたので。
――『モテキ』『バクマン。』などの実写映画で有名な監督ですよね。
新房
そうですね。最初何回か打ち合わせした結果として大根さんから返ってきた脚本が、原作にプラスアルファするもの、つまり今の形にほとんど近いものだったんです。それで自分としても「ああ、これは原作寄りにすればいいんだ」という理解をしたということなんです。
――原作のドラマは2つエンディングがあるのがポイントです。今回は「繰り返す夏休みの1日」とキャッチにあるように、分岐がもっと増えていますよね。それも最初のころから入ってきた要素ですか?
新房
ええ。原作は45分ものですから。おそらく大根さんのほうで、これを一時間半ものにするには尺が倍必要だというところで、結末が増えていったんだと思うんですね。あと分岐をわかりやすくするための「不思議な玉」みたいなアイテムは、岩井俊二さんからのアイデアなんです。
――岩井さん大根さんとの打ち合わせは、どんな雰囲気でしたか?
新房
けっこう楽しい会議ではありました。本編以外でいろいろ出てくる雑談が、なんだか非常に楽しい会でしたね。
――岩井さんは、どういう感じで参加されていたのでしょうか。
新房
岩井さんの方からも、かなり積極的にいろんなアイデアが出ていました。
――アニメにすることを意識して?
新房
おそらくそうです。最初は「列車が水中をいくというシーンを作ったらどうだろう」とか。
――予告にも水面をいくシーンがありますね。どこか「水没」のイメージがあったんでしょうか。
新房
そういう話もしました。ホン読みはずっと昔のことになってしまったので、うろ覚えではありますが。最初のうちは「地震があったのをどう絡めようか」みたいな話もあったんです。
――あっ、やはり関係あるんですね。あのドラマのロケ地(千葉県海上郡飯岡町)が3.11で大きな被害を受けてしまったという話も読んだので、東日本大震災後を前提にした企画なのかなと。
新房
たとえば「不思議な玉」に被災者たちの思い霊が……みたいに絡める案もあったんです。でも、それをアニメでやるのはちょっと厳しいかな、と思って外してもらいました。ただ若干、そういう匂いは残ってるかもしれませんね。
――大根さんの小説版にははっきり残ってますね。震災で人助けしようとして……みたいなことがサラリと出てくるんです。
新房
なるほど小説に。海の中に進んでいく列車の中で、いろんな人たちと出会うみたいなイメージとかもあって。そこはちょっと『銀河鉄道の夜』を連想させる感じでした。
――杉井ギサブロー監督のアニメ映画にもありますね。
新房
岩井さんがもともと宮沢賢治の小説のほうのイメージを持っていたのかもしれません。最初のころそういう幻想的なイメージも、よく話していたんです。ただ、アニメの場合は結局それをやろうとすると、具体的な絵を描かなければいけなくなるわけです。描いたとたん、ものすごく人為的になってしまう。崩壊してしまった土地をそう描くのは避けたいと思って、なくなっていきました。
楽しい雰囲気で詰めていった青春ストーリー
――物語のメインは、ひと夏のあこがれを描いた「青春もの」という感じです。
新房
いろんな議論を重ねながら、結局そういうところに落ち着いた感じでしたね。
――主人公たちの年齢を小学生から中学生へ変更したのは、やはりアニメにしたときの特性を考えてのことですか。
新房
アニメの場合、かなり子ども子どもさせて描くようにしないと、どうしても小学生には見えなくなるんです。でもそうしてしまうと、今度は恋愛要素っていうのが難しくなってくるんですよね。かと言って中3ぐらいに上げてしまうと、男の子も相当成長してくるから、女の子のほうが年上に見えないだろうと。じゃあ、ギリギリ中1だよねって、そんな感じで決まっていったように思います。その時期なら、まだ女の子のほうが年上っぽいし、身長も高いですしね。
――女子が先に成長していく感じは自分にも覚えがあります。打ち合わせはどれくらいの期間やられていたんですか。
新房
結構やってました。2012年秋冬ぐらいにお話をいただいて、2013年はほぼずっと関わっててたから、1年近く長々とやっていたはずです。後半ではいま監督で現場を指揮している武内(宣之)さんにも入ってもらい、絵づくりのアイデアをまとめたりもしていました。灯台のイメージなどは、武内さんからの「より強調したい」という意見で、見応えのあるものになってますね。
――そもそもの話で恐縮ですが、岩井俊二監督という作家に対して、新房さんはどう思われていたのでしょうか。
新房
いや、すごいなと思ってたんで……うん。
――作品はご覧になってたんですか?
新房
映画はあまり観ないので全部ではないですけど、『花とアリス』は持ってます。あとは、市川崑の……。
――あ、市川崑のドキュメンタリーだ(『市川崑物語』2006年)。
新房
そうそう、あれは知らないで買ったら岩井さんだったと聞きました。
――岩井俊二監督って、アニメを語るときによく引き合いに出されますよね。
新房
そうですね。お会いしてみると、岩井さんは宮城のご出身なんで、東北のほうの言葉の片鱗が若干残ってる感じもして、ものすごく親近感がわきました。自分も福島なので。
――原作のドラマも、日本の古い風景がまだ残ってる地方都市っぽいところが面白いですよね。実写の監督とのお付き合いはいかがでしたか。
新房
映画監督って、もっと武闘派なのかなと思ってました。だけど、そうでもないんですね(笑)。
――武闘派って何ですか(笑)。
新房
役者とスタッフをいつも怒鳴ってないといけないのかなあ、みたいな。岩井さんはそういう感じではなかったので、よかったです。
――岩井監督ご自身もロトスコープを使って『花とアリス殺人事件』というアニメ映画を作られています。
新房
打ち合わせ途中で岩井さんのスケッチブックを見せてもらったことがあるんですが、絵が非常に上手だったんで、ビックリしましたね。小説も書いて音楽もつくるし絵も描けて、すごい才能だなあと。撮影現場で暇なときには、人の顔をスケッチしたりしてるらしいんです。それも下書きもとらずに、一発書きで。
――だとすると、岩井さんからアニメに対してイメージボード的な絵は出されていないんですか?
新房
それはなかったですね。最初のうちは実写の映画監督2人とアニメ監督がいて、そのやりとりってどうなるのかなと思ったんだけど。特にモメたりするということもなく、うまいこと回った感じがします。
――岩井さん大根さんは『魔法少女まどか☆マギカ』と新房監督に対するリスペクトがあったともお聞きしますが。
新房
そこもあまり意識してなかったです。やりとりは普通にスムーズで、映像が好きな人たちが集まって、みんなで酒飲みながら会話をしている、楽しい感じでした。
――今みたいな打ち合わせで、まずシナリオを開発していった感じですか。
新房
ええ。大根さんがあげてきた脚本に対して意見を言って、それに対するアンサーが来るという形で直していって、というのを何度か繰り返したぐらいでしょうか。アニメのホン読みとどう違うかわからなかったから、戸惑いはしました。アニメだと段々と直して二稿、三稿と重ねていき、最後に決定稿という流れですが、その決定稿をいつ出すかはっきりしないまま進んでいったんです。
――えっ、そうなんですか。
新房
やりとりの中で煮詰まっていったときに、「じゃあこれで」みたいに決まったような気がします。
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©2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会